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ぐるりのこと。

ぐるりのこと。 前作『ハッシュ!』(02)がカンヌ国際映画祭ほか数々の映画賞受賞と50カ国を超える世界公開で話題となった橋口亮輔。6年という長い歳月を経て辿り着いた本作のオリジナル脚本は、自身が『ハッシュ!』以降に経験したさまざまな出来事をもとに書かれている。人間の悪意が次々と顕在化していった9・11以降の世界、その中で自らがうつになり、闘った苦悩の日々。そこで彼は、日本社会が大きく変質したバブル崩壊後の90年代初頭に立ち返り、自らの人生と世界を重ね合わせ、「人はどうすれば希望を持てるのか?」を検証したと言う。彼が導き出した答えは、「希望は人と人との間にある」ということ。そうやって苦しみを乗り越えた実体験を反映させ、橋口亮輔はささやかな日常の中にある希望の光を、1シーン1シーンをいつくしむ丁寧な演出で浮き上がらせる。6年ぶりの復活作は、観た後もずっと心の中に大切にとどまり続ける、いとおしさにあふれた名作になった。
 舞台となるのは1993年冬から9・11テロに至るまでの約10年間。法廷画家のカナオと妻の翔子、どこにでもいる夫婦を突如として襲う悲劇―初めての子供の死をきっかけに、翔子は精神の均衡を少しづつ崩していく。本作は二人の再生のドラマを描き出す一方で、その社会的背景にも静かに迫っていく。カナオが法廷で目撃するのは、90年代から今世紀初頭にかけて起きた実際の事件とその犯罪者たち。個人の希望の裏側に存在する社会の負の側面にも目を向けている。(京都シネマ・赤染 芳)
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作品情報

  • 出演:木村多江、リリー・フランキー、倍賞美津子、寺島進、安藤玉恵
  • 原作・脚本・編集・監督:橋口亮輔
  • 音楽:Akeboshi
  • 製作年:2008
  • 製作国:日本
  • 配給:ビターズ・エンド
  • 時間:140分
  • ジャンル:ドラマ
  • 公開日:08/06/21
  • 京都シネマの上映情報
コンテンツ企画協力:京都シネマ