茄子
茄子
奈良時代から栽培されていた茄子は身近な野菜として日本各地で栽培され、その土地の気候風土や食の好みにあったさまざまの品種が栽培されてきました。泉州の水茄子、仙台の長茄子、山形の民田茄子などが知られています。芭蕉の「めずらしや山を出羽(いでは)の初茄子」の句は卵より小さい民田茄子を吟じたものでしょうか。
「初茄子」は高値で取引されました。正月の初夢に見ると縁起が良いという三つは、徳川家康の駿河(するが)の国の高いものを挙げたといわれています。茄子は「為す」「成す」でもありました。
それにしても茄子紺と呼ばれる黒味さえ帯びた艶やかさは見事で美しいものです。山科茄子はその色が褪せやすいため見放されました。京都で夭折した女流俳人の石橋秀野は「秋茄子の紫おもく親遠し」と吟じています。既にはかない花の時から、いずれ鈍色に輝く実の紫色を想像させています。