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エンジェル

 1940年代~1960年代にかけて活躍した英国の女流作家、エリザベス・テイラーが1957年に発表した小説「エンジェル」が原作。高慢で自己中心的だが、一途で愛らしい主人公エンジェルを、女性の美しさや強さといったポジティヴな面ばかりでなく、脆うさや恐ろしさ、身勝手さといったネガティヴな面も魅力的に描くことで定評のある、フランソワ・オゾン監督が新しい彼のミューズ、ロモーラ・ガライを得て、その手腕をいかんなく発揮している。
 1900年代初頭のイギリス。父の遺した小さな食料品店を営む母親と暮らす16歳のエンジェル・デヴェレルは、自分は由緒正しい貴族の娘として生まれているはずだったと信じている。近くにある豪邸<パラダイス>での贅沢な暮らしを夢想するエンジェルは、自分の粗末な部屋の中で、その想いから紡ぎだされる物語の世界に浸っていた。やがて、類まれなる文才をもつエンジェルは文壇デビューのチャンスをつかむが、周囲の人たちは彼女の高飛車でわがままな振る舞いに辟易する。しかし、エンジェルに心酔し後に彼女にとってかけがえのないパートナーとなる秘書ノラを得て、着実に作家としての地位を固めていく。夢に描いた暮らしを手に入れたエンジェルは、次々に作品を発表し注目を集め、初めての恋にも目覚めるが…。
 主演のロモーラ・ガライはまだ弱冠25歳だが、ケネス・ブラナーやウディ・アレンの監督作にも抜擢され活躍する実力派。そんな彼女が「大ファンだった」というフランソワ・オゾン監督の最新作で、16歳から44歳に至るまでの多様に変化していくエンジェルの短くも激しい人生を熱演している。また、エンジェルの人生に深く関わり支え続ける出版社の発行人をサム・ニール、その妻をオゾン監督の常連シャーロット・ランプリング、秘書役をルーシー・ラッセルが演じ、脇を固めている。そのほかにも、エンジェルの人生に呼応するように登場する豪華な衣装や美術など、見ごたえ十分の秀作。(京都シネマ・横地由起子)
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作品情報

  • 出演:ロモーラ・ガライ、シャーロット・ランプリング、サム・ニール、ルーシー・ラッセル
  • 監督:フランソワ・オゾン
  • 脚本:フランソワ・オゾン
  • 音楽:フィリップ・ロンビ
  • 製作年:2007
  • 製作国:ベルギー、イギリス、フランス合作
  • 配給:ショウゲート
  • 時間:119分
  • ジャンル:歴史
  • 原題:ANGEL
  • 公開日:08/01/12
  • 京都シネマの上映情報
コンテンツ企画協力:京都シネマ