しんいちのライブな日々

市川スピリットは生きている

 「京都で活躍する元気印のピアニストといえばこの人‥風貌はほとんどセロニアスモンク」(89年10月15日付)。芸能記者になって1カ月目、京都のジャズプレイヤー特集の冒頭で紹介したのが市川修さんだった。
 豪放磊落。フルート、サックスもこなす。ピアノが壊れるほどの激しさで鍵盤に向かい、佳境に入るとテナーサックスを持ち出し、寝転がって吹きまくる。ジャズスピリットの塊(かたまり)のような人だった。昨年1月、自宅の練習場で倒れ帰らぬ人となった。56歳だった。19日、北山の「MOJO WEST」(京都市北区)で追悼のライブが開かれた。
 市川さんと共演してきた仲間に、NYからソニーロリンズのバンドで活躍したトロンボーン奏者・クリフトン・アンダーソンが加わった豪華メンバーだ。
 ファーストステージは、アンダーソンを迎えてメンバーがやや硬くなってしまい、今一歩抜け出せないまどろっこしさがあった。
 セカンドステージ。客席にアルコールがほどよく回ったのか、なごんだ雰囲気があらわれた瞬間、シャイなトランペッター(田中さん)に火がついた!(来たぞ!)。リーモーガンのフレーズをちりばめながら上り詰めていく。テナーサックス(武井さん)がポーカーフェイスを装いながら渋みのある音色をグイっと突き出せば、ベース(福呂さん)がブルージーなアドリブでアンダーソンをうなさせる。前半から飛ばしてきたピアノ(辻さん)は、仁王立ちのガンガン弾きだ(市川さんが乗り移ってきたゾ!)。
 ふと見ると、舞台に張られた市川さんの遺影が微笑みかけてきた。ジャズスピリットは確実に引き継がれている。

執筆者:平山