桔梗
花の凛とした美しさはもとより、その草姿もまた無駄なものをそぎ落した、キリリとした品位を漂わせています。一茶が「きりきりしゃんとしてさく桔梗かな」と吟じています。
花や草姿だけでなく、その蕾も人の思いを誘ってやみません。「桔梗の花咲くときポンといひそうな」という千代姫の句がかすかに紫色を浮かべた蕾の柔らかくふくらんだ様を言いあてています。
大徳寺の芳春院や紫式部邸趾という盧山寺など桔梗を配した名庭がありますが、山野にあってこそという気がします。
丹波への入り口にあたる亀岡はよく霧のたつ土地です。この地を治めたのが本能寺の変で知られる明智光秀です。6月2日のその日、桔梗の紋所を掲げた光秀の軍勢は亀山城を発して老ノ坂峠を越え、桂川畔に達した時、光秀は「敵は本能寺あり」と下知(げち)しました。亀岡の湯の花温泉の西北にある宮前町猪倉にある谷性寺は〝光秀寺〟とも呼ばれています。門前には昨年から桔梗園が開園しています。