しんいちのライブな日々

ロックなのに「ハナゴコロ」

 「会うことになっていたのでは」と思わせる出会いがある。ロックバンド「overall+」(スマイルカンパニー)の場合はそうだった。
 発端は、ライブスポットRAGのスケジュール欄を見たことだ。デビューアルバム「1st Mini Album『ハナゴコロ』RELEASE」と記されていた。「ミニアルバム」という中途半端さ、ロックなのに「ハナゴコロ」という妙に詩情性を強調したタイトル。
 「何だこりゃ!」。RAGに電話した。
 「リーダーのヤマダアキヨシ(vo、g)、ヨシダトモヒロ(g、コーラス)、2人とも京都出身。RAGで育ったバンドっスよ‥」。店長の声がいつになく熱い。
 開演直前のライブにすべりこんだ。
 “組長”のような風貌の超職人的ドラム、完全にラリッているベースの強力助っ人を得て、のっけからぶっ飛んでくる。まるで、崖っぷちの山道を全速力で走る車だ。聴いてるモノを不安に引きずり込んでいく。
 まずは、ボーカルの声質だ。芯が太いが京都人特有の母音のやわらかさ。さらに絹のようなコーラスがかぶると甘酸っぱさが倍増。歌詞も直球勝負の恋心なんか盛り込んじゃって憎い(胸中かき乱してくれるじゃないの)。「分かった!」激しいロックと歌謡曲。合わないものが同居するあぶなかしさ!突然むせぶギター。
 「この懐かしい音は何だ?70年代じゃないか」。ストラトのギター、VOXのビンテージもんアンプと見た。イーグルス、サンタナ‥往年のバンドのサウンドが恥ずかしくて書けないような青臭い記憶とともにフラッシュバックする。もう駄目だ。「こいつら、ただモンじゃねぇ!店長やばいっス!」。心の中で雄たけびを上げた。

執筆者:平山