しんいちのライブな日々

上野樹里ちゃん?

 昔「1粒で2度美味しい」とかいうCMあったナ。その日のライブがそうだった。「GALLIVER GET」という名の5人組ユニット。
 「ウォーっ。上野樹里ちゃん?」。やっぱり、ヴォーカルをやってるボブヘヤーの女の子に目がいってしまう。マイクを持った途端右肩が上がり、口がゆがんでいく。「この顔どっかで見たぞ」。ビリー・ホリディの名盤「奇妙な果実」のジャケットだ。
 キュートな歌声と思いきや、まったく違った。多少荒削りだが、黒人テイストをたっぷりふくみ、男性顔負けの押しでグイグイくる。夢を描きながら、いま一歩届かない若者の心情を歌う。もどかしさに、胸キュンだ。
 涙腺が切れそうになると、横のサックスが「ここぞ」という絶妙のタイミングで“泣き”を入れてくる。(オイオイなかなか憎いゾ)ボサボサの髪、よれよれの服。決して目立たない。演奏は、出すぎず、ひき過ぎず礼儀正しさに背筋が伸びる。ここまで書くと、「なーんだジャズかフュージョンバンドか」と思ってしまう。ところが、どっこい違う。
 国籍不明なところがこのバンドのカラー。ロック、ボサノバ、スイング曲ごとにスタイルが変わっていく。それでも違和感なくこなしてしまう。6月13日にメジャーデビューするという。うれしいけど、“上野樹里ちゃん”が有名になってしまうと寂しい(中年のオジサンか~っ)。複雑な心境だ。

執筆者:平山