南天
名称は漢名の南天、南天燭に拠ったものですが、その語音から「難を転ずる」縁起の木とされ、植えておくと火災から免れるとか毒を消す木として箸として用いたり、赤飯に葉を添えたり、仕出し屋の胡麻塩の紙袋に描かれたりする民間伝承があります。
梅雨の頃、穂状の花を咲かせ、秋に実をつけ、寒くなるほどに美しい赤色になってゆきます。花ことばの由来でしょう。
元禄時代(1688~1704)に庶民の間に普及しました。現代では庭木として親しまれています。鹿苑寺(金閣寺)の茶室有佳亭の床柱はこの木で出来ており、〝寅さん〟でおなじみの柴又帝釈天題経寺ものと並んで貴重視されています。
南天の実はくれなゐににほへれどこの焼跡に来る鳥もなし
木俣修
「国破れて山河あり」を思い起こさせる敗戦後の風景です。