京都民報
なるほど京都

京のお人形

人形寺・宝鏡寺学芸員が語る、京のお人形話あれこれ。

著者:田中正流

出世稲荷神社の出世鈴

出世稲荷土鈴 桜の季節が過ぎ、新年度が始まりました。
 今回紹介するのは、京都市上京区にある出世稲荷神社で授与される出世鈴です。白地に赤で「出世」の文字が目立ちます。もちろん出世の御利益のある景気の良い土鈴です。
 出世稲荷神社はお稲荷さん(稲荷神)を祀っています。稲荷神はウカノミタマといい、古事記では宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)、日本書紀では倉稲魂尊(うがのみたまのみこと)と表記される神様です。名前の「ウカ」とは、穀物や食物の意味で、穀物の神、農耕の神、商工業の神として信仰されています。
 豊臣秀吉は幼い頃から稲荷神を信仰しており、聚楽第の邸内社として創建されたのがこの神社の始まりです。天正16(1588)年、この邸内社を参詣した後陽成天皇により、立身出世を遂げた秀吉に因んで「出世稲荷」の号を賜ります。それ以後、出世開運の神社として大名や公家の崇敬を受けました。現在地へは聚楽第の取り壊しのあと、寛文2(1663)年に遷座しています。江戸時代中期には隆盛を極め、鳥居の数も329本に達したと伝えられています。天井に堂本印象の登り龍の描かれた本殿には六代目清水六兵衛作の御神体が祀られ、尾上松之助の寄進による石鳥居、新門辰五郎の寄進による狛犬などが境内にあります。
 出世稲荷神社のご利益は、

  1. 開運出世の福
  2. 衣食住の福
  3. 地位名望の福
  4. 衆人愛敬の福
  5. 農工商その他一切の生業に大繁栄の福
  6. 延命長寿と病気平癒の福
  7. 千客万来の福
  8. 武運長久の福
  9. 善智識の福
  10. 金銀財宝の福

など、なんでもありです。 豊臣秀吉が一介の足軽から関白太政大臣にまで出世したことにあやかれる土鈴を手に入れ、不景気と格差社会を乗り切りましょう。

写真:出世稲荷神社「出世鈴」 筆者所蔵