京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ヤス (やす)

 「~ヤス」も敬語の助動詞である。とくに、京都では「~ハル」や「~オス」とくらべて敬意度が高い。というのも、「~ヤス」は接頭語の「オ」をつけて用いることが多いからである。例えば、「ようこそ、オいでヤシた」とか「今日は、あんたもオ行きヤスか」などと相手を立てることばとなる。現在の待遇表現はさまがわりしているが、同じ敬語の助動詞を使っても、そこに話し手の心がわかる。語源は、「~マス」の訛音といわれるが、この語も江戸期からみられるという。
 雑俳資料でみると、「湯豆腐も そうろくでやす南禅寺」宝暦元年(1751)とあり、この「そうろく」とは僧録の字があてられ、精進料理を食す禅寺につながるものではないのか。また、その後の明治36年(1903)ごろになると「はれがましい お涼みやすと通る嫁」となって露地などの庶民の生活が映し出されている。雑俳の句には、文献では教えてもらえない証(あか)しがみられる。