京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

タント (たんと)

 多くにとかたくさんにという意味で使用する「タント」は、江戸初期では、程度のはなはだしいさまという意味がつよかった。語源は「足りぬ」の訛(なまり)音である「タンヌ」とする説が強い。その「ヌ」は、もちろん完了や強意の意味での助動詞である。
 雑俳では、「うろたへて たんとは飛ぬ放し鳥」元禄十三年(1700)とか、「かるたより 後へたんと絵がついて」享保八年(1723)などとある。
 ところが明治の時代になると「たんとあっても 水の乏しい船所帯」明治十三年(1880)とか、「たんと有ても 命ばかりは買えぬ銀子(かね)」明治三十年(1897)といったように、多量にという意味が強くなっていく。
 京ことばでは、「ギョーサン」「タント」「ヨーケ」の意は微妙に相違する。最近では、この「タント」は二十代のほとんどが理解も使用もしないといった結果がでている。