京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

タモ(たも)

 「~タモ」は、「タモル」(給る)の命令形「タモレ」の下略語といわれる。現代の意味では、~してくださいと目下の者が目上の者に対して使用する場合が多い。例えば、「たばこでも、一服吸ってタモ」とか「そこの物取ってタモー」といったように用いる。これは、「タマワル」(賜わる)という目上の人から目下の者がある物を受けとる尊敬の意から、丁寧の意に移った語と思われる。「タマワル」から「タモレ」「タモ」というこの語の音と意味の変化に時代差がみてとれる。  雑俳でみると次のようにでてくる。「香(こう)の物 嬶(かか)のかたみじや喰(くふ)てたも」元禄16年(1703)、「大きなは たんとぬらしてすへてたも」宝暦14年(1764)、「女房といふてたもやと抱きしめる」文政3年(1820)などとなる。全国的には東北や近畿でみられ、京都では周辺部の八瀬、花背、中川など北部で、「~タモレ」や省略化した「~タモ」が現存している