京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

セングリ (せんぐり)

 「セングリ」という副詞も、京ことばにある。漢字としては、先繰りという字が当てられている。ただ、使用する場合には、(A)「セングリに、入っトクリャス」という順次にの意と、(B)「セングリセングリ、大勢の人が来ヤハルワ」と「セングリ」を重ねたあとからあとからという意とあって少しニュアンスが異なるようだ。文献によると、「セングリ」は江戸前期の『日葡辞書』慶長8年(1603)のあたりからみられる。
 雑俳での例をみてみよう。(A)の順々にの意としてみられるのには、「せんぐりに 飯喰ひに出る仲居ども」宝暦6年(1756)、「せんぐりに 父の詞(ことば)を子でおもふ」天明4年(1784)とあり、(B)の意では「せんぐりせんぐり 苦の減る親の苦が殖(ふえ)る」明治13年(1880)、「せんぐりせんぐり 門へ重ねし祈禱礼」明治25年(1892)などとなる。この語は、京都市やその周辺部、京都府北部で中高年層に用いられている。