京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ロージ(ろーじ)

 「ロージ」は、京ことばとしては家と家との間の狭い通路をいう。それも、袋小路となっているところが多い。「ロージ」のもとは「ロジ」(露地)であり、庭園をさすことばであった。とくに、茶室のある庭園などに使われた語である。元禄6年(1693)に記された『男重宝記』には「ろうじは露地(ろじ)也」とある。それでは、「ロジ」が「ロージ」へ長音変化し、そのもつ意味も変化していったのはいつごろであろうか。  雑俳資料でみたみると、「ろじぬけて客生捕(いけどり)にする酌妓(なかい)」文化14年(1817)、「拍子よふ 摺違(すれちが)ふろじ(露地)知らぬ母」文政2年(1819)とあるのが、「ろうじから 長屋を引つくるめて荷ひ」天保15年(1844)、「よめたわい あれな露地(ろうじ)で御隠居に」安政4年(1857)となる。このことからみると、江戸後期の天保年間ごろを境として、音と意味とに変化がおこり、いわゆる「ロージ」となったのではないか。