京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

オスモジ (おすもじ)

 女房ことばが庶民語となったのに「オスモジ」がある。「オスモジ」は酢でしあげたすしのことであるが、「オ」という接頭語と「モジ」という接尾語がついた。「このオスモジ、オイシイナー」といったように使用する。しかし、この語の使用層は旧市内の老年層に限られるようになった。すしは大別して江戸前ずしと関西ずしとに分けられるようで、関東ずしを代表するのが握りずし、関西では主にちらしずしや棒ずし、箱ずしのことをいう。そういえば、京ではすしといえば「バラズシ」(五目ずし)とか鯖ずしを連想する。握りずしは「ニギリ」という。この「オスモジ」が庶民語となったのは江戸中期以後であろう。
 雑俳でみると、「私は御免(ごめん) 御すもじよばれます女房」天保10年(1839)や「けんもほろろ 御酢(もじ)ばつかりをよばれ」弘化2年(1845)などとでてくる。江戸前ずしはのど越しを味わい、関西ずしは歯ごたえを楽しむものといわれる。