京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

オマン (おまん)

 「オマン」の「オ」は接頭語で、饅頭(まんじゅう)のことである。御所ことばの系統であるが庶民的な語「オマン」について今回は触れたい。
 慶長8年(1603)に記された『日葡辞書』には「ヲマン、饅頭に同じ。婦人語で本来は饅である」とある。御所ことばでも「マン」(饅)といい、「ズ」(頭)という中国音が「ジュウ」と長音化して接尾したものである。そして、接頭語がついたり下略化して「オマン」となった。この類の京ことばには、飲食物に限っても「オツクリ」「オカボ」「オカラ」「オヒヤ」などきりがない。
 さて、雑俳ではとみると「嬉しうて お饅は黒い手でよごれ」天保10年(1839)、「からくりて 笹の衣装(べべ)着たお饅売る」天保15年(1844)とか、明治25年(1892)には「見て来(こ)うか お饅の礼に往(ゆき)がてら」などとでる。御所ことばの系統であっても、今ではまったく庶民語となったものがある。