京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ニャア(にゃあ)

 「ニャア」は、俗称「ニャンコ」ことばといわれ、京都市の周辺部である八瀬地区でみられる。意味は~ねえにあたる終助詞である。例えば、「エー天気でよいニャアー」とか「仕事の手をとめて、悪かったニャアー」など。これを、江戸人からみた『柳多留』明和期(1765~)には「もう弐厘(にりん)買んせにゃあと黒木うる」とあるし、『物類呼称』安永4年(1775)でも「助語(ことばのをはりにつくことなり)、京師にて 『ナ』、八瀬大原辺にて『ニャ』…」とある。この「ニャ」は「ニャー」と長音化して用いられることが多い。  雑俳でみてみると、「ま一つと 他国にいはぬ八瀬のにやあ」元禄9年(1696)、「はらはるる げうもくやみに来ましたにやあ」正徳3年(1713)とあって、(八瀬の人のことば也)と但し書きがついている。それほど「~ニャア」ということばはその使用範囲が狭いことがわかる。隣接する大原の人が、この語は使わないといっている。