京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ネキ (ねき)

 「ネキ」は根際(ねきは)を語源とするものといわれ、安永4年(1775)に書かれた『物類称呼』には「際(きは)、畿内また尾張(愛知県)辺、播州(兵庫県)辺にてもねきといふ。根際の略なるべし」とある。このように、かたわらとかそばの意をもつ方言としての範囲は予想外に広い。ただ、私が発表した方言研究会で広島大学の著名な方言学者である藤原与一先生から、「ネキというのは、どういう意味なのですか」と問われたことがある。ということは、広島あたりではあまり使われない語らしい。京都ではそれこそ「門のねき、橋のねき、人のねき」などと使用する。
 雑俳では歴史的に「桶もつて ねきへよらんとそこへ召せ」天保15年(1844)とか「ねきへより 師の活花(いけばな)に両手つく」「ねきへより 怖い話しが押してくる」明治36年(1903)となる。「ネキ」は現用されてはいるが、いつまで生きていく語であろうか。