「マッタリ」は、形容詞「マタイ」(全い)の語幹に状態を表す接尾語の「リ」がついて、それが促音化したことばだといわれる。この語も、京のことばの特色をもつことばだし、意味も多彩である。
例えば、上方の雑俳でみると「牽(ひ)いてみたさにまたい馬借り」と宝永七年(1710)の句があり、(A)ゆったりとして緩慢なさまをいう。現代でも、「工事やサカイ、車の進みがマッタリしているナー」などと滋賀県では使用している。
もともと、慶長八年(1603)の『日葡辞書』にあるように、率直単純で実直なという意味のものであったと思われるが、「またいまたい醤油をもらう鱸(すずき)の酢」享和二年(1802)とあるように、(B)京ことばでいう食物のとろんと穏やかな口あたりをいうようにもなった。「ハンナリ」のくたくたなさま、ぐんにゃりという意味はなくなったが、「マッタリ」は、江戸期からの多くの意味を残している。