「キョートイ」は、(A)人気(ひとけ)がなくてさびしいとか、(B)おどろきあきれるほど程度がはなはなだしいといった意味をもっている。この語の意味は多彩だが、近世初期から庶民が使用した上方語と考えられる。
漢字をあてれば、気疎いとなるのであろうか。それは、天保年間(1830-1843)にだされた『俚言集覧』によると、「関東にてはコハイといふ事を、上方にてケウトイと云」とあることからもわかる。
雑俳資料では、「これやならぬ山下京(きょう)といひえおろし」宝永六年(1709)と京の底冷えをいったり、「けふとひ事友達誘ふ東福寺」文化元年(1804)とあって、当時の東福寺の様子がわかってくる。
しかし、現在での使用範囲は山陰地方や福井県でみられ、京都市では八瀬地区で辛(つら)いの意で残っている。廃語に近いことばの一つとして興味ある語である。