京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

クワイチゴ(くわいちご)

 「クワイチゴ」とは、今ではほとんど知られなくなったが桑の実のことである。六月ごろに熟して紫紺色となり、小さな円すい形のものとなる。思い出すと、わたしが戦時中に疎開していたころ、食に飢えた児童にとっては最高の食物であった。「あの山ゲに、クワイチゴがあるゲーナ」といわれると一目散にとりに走った。もちろん、その形態がいちごに似てることからでた語であるが、その葉は蚕(かいこ)にとっては大事な飼料である。正保4年(1647)の『翁草』に「葉は蚕 実や人の為桑いちご」とでている。  雑俳資料でみると、「人とかけしなぞをあければくわいちご」享保15年(1730)がみられる程度である。が、この「クワイチゴ」が現在でも洛北の花背や南部の精華町でもみられるし、その色からでた「フナビ」が綾部市、「フナメ」が福知山市、「ヒナビ」が熊野郡や竹野郡にみられて、府下でもその方言範囲は広い。ただ、市内ではほとんどが廃語となっている