京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

キサンジナ (きさんじな)

 「キサンジナ」とは、気散じなの字があてられる形容動詞である。慶長8年(1603)の『日葡辞書』あたりから、「キサンジナ〈訳〉くつろがせ、心を楽しませること」とある。これからみるとかなり古い語となるのだが、その意味は微妙に変化していく。京ことばでは、(A)気苦労のないことと(B)快活なことをいう二通りの意味がある。方言分布としては主に狭い近畿圏でみられるが、(A)から(B)へと意味が変化していく時期がわからない。
 庶民がいう雑俳でみると、(A)の意での「栄花を捨てた庵の気さんじ」寛政12年(1800)や「三か日 きさんじに寝る大貧乏」文政3年(1820)とあるのが、(B)の意と思われる「きさんじな サーベルなぶつている迷児(まいご)」とか「庭へ下(お)り 夕辺(べ)の嫁が気さんじな」明治43年(1910)となってでてくる。とすれば、この語もやはり幕末から明治にかけてに意味の変化をし、現在に至ったものであろうか。