京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

サナルイ(けなるい)

 「ケナルイ」は形容動詞の異(け)なりが形容詞化したもので、うらやましいといった意となる。近世初期以来の語といわれ、京都では「ケナリイ」と使用されるというが、現用では「ケナルイナ、この不況のときにもうける人もあるニャテ」とかなることが多い。文献によると、延宝9年(1681)の『大矢数』に「天乙女七夕祭けなりいか、こがねの茄子行水の秋」とあるが、文政4年(1821)の『浪花聞書』には「けなるい、うらやましい也」となる。このラ行の音変化は、この少し前からおこったと考えられる。  雑俳では、「夕すずみ 蛙けなりや蓮の池」元禄8年(1695)から「夏がきらひ 深山(みやま)の不動けなりがる」天保13年(1842)、「けなりがり、わたしはしらぬ親の顔」明治33年(1900)と「ケナリイ」がでてくる。「ケナリイ」は老人層で、音訛(か)した「ケナルイ」は中年層以下でといった世代差がみられる。