京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

カタクマ(かたくま)

 「カタクマ」は、人を肩に乗せたり、首にまたがらせたりすることをいう。よくみかけるのは、男親が小さな子を人がきの中で少しでも見させてやろうとする場合にする。語源は「カタコマ」(肩駒)の訛(なま)ったものといわれ、慶長8年(1603)の『日葡辞書』には「カタクマ、両肩または頸(くび)の上に乗馬のように乗ること」とある。「カタグルマ」(肩車)が西日本に広く分布しているが、それほど古い語ではなかろう。府下では「カタウマ」が福知山市で、「カタキンバ」が京田辺市などでみられる。  雑俳でみると次のようにでてくる。「ひよこひよこ かたくまの子が葬の供」元禄15年(1702)、「鎗(やり)かたげ かた車(くま)にのる大井川」文化11年(1814)、「むりな事 母に肩くませがんでる」明治36年(1903)などである。「カタクマ」という語は消えても、その所作は親子の絆(きずな)として、ほほえましい光景ではないか。