京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

イカキ (いかき)

 「イカキ」は、もともと竹製のざるのことである。台所の用具では欠かせないものであって、今では金網製などのものがほとんどになっている。用途は、湯水でのゆがきなどに用いられ、しごく便利である。語源はいろいろとあるが、『大言海』にある「笊(ざる)をゆかけと云えば、湯注(ゆかけ)の転ならむ」とあったり、「湯掻(ゆかき)の訛(なまり)か」ともいう。嘉永3年(1850)の『皇都午睡』に「上方のいかきを、江戸でざる」とあるように、「ユカケ」「ユカキ」などといって西日本に広く分布している。
 雑俳では、「ちりぢりに笊(いかき)でおあし取りにがす」天保4年(1833)、「納豆の笊底買ふ小朝寝坊」嘉永元年(1848)、「留守を考へ雀の洗う飯笊」明治13年(1880)などとでてくる。それぞれに、「イカキ」は古くからいろいろな用途に用いられたことがわかるし、品質は変わってもこれからも便利な家庭用具だといえよう。