京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

へー (へー)

 応答詞の「へー」は、肯定である「はい」の意味やあいづちの受けの意味になったり、時には否定の意をもつこともある。また、「へーへー」と重ねことばをとったり、「へー、オーキニ」という慣用句になったりもする。現在では、やや高年層の人たちでしか聞かれなくなったが、本居宣長はその書『玉勝間』寛政5年(1793)で「ヘイは、深く敬ふいらへ也」といっている。否定の意をもつ場合とは、祗園の舞妓が客の誘いに対して「へー、オーキニ」と一応は答えるが、実際にはやんわりと断るときなどに使用する。
 雑俳でみると、「ヘイヘイハイハイ 腹から商人(あきんど)に産れ」天保10年(1839)、「当世向き、低ふ往(いき)よるヘイヘイと」安政4年(1857)あたりから「ヘイヘイ言い 御辞儀の安い選挙前」明治36年(1906)とでてくる。京ことば的なこの応答詞は、その場面によってその意が微妙に変化するものだといえる。