現代の京ことばとしては、やっぱり「ハンナリ」ということばからはじめたいと思う。
「ハンナリ」は、(A)はなやかで、ぱっと明るいさまの意味をいう。しかし、(B)くたくたなさまで、ぐんにゃりといった意味ももつ。
江戸期の庶民のことばがみられる雑俳をみると、そのことがよくわかる。(A)としては、「逼塞(ひっそく)の庭にはんなり絹襷(きぬたすき)」天明元年(1781)とあるし、(B)の意味合いでは、「ちっくちっく(ちょっとちょっと)ついにはんなりぎゃくと成り」安永四年(1775)という句がみられる。
どちらの意味も江戸期ではみられた事実があり、現代の京ことばでいう、陽気で上品な明るさという意味への変化とどうつながるのであろうか。
近世上方語では、視覚だけではなしに聴覚、触覚などのニュアンスで用いられたことはまちがいない。代表的な京ことばであるが、まだ謎(なぞ)がある。