京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ゴリ(ごり)

 京都らしい小さな川魚に「ゴリ」がある。鮴という字があてられるが、各地でいろいろな異称をもつ。「ゴリ」の語源は、「ゴ」がなき声で「リ」は接辞といわれるが、そうであろうか。本居宣長の随筆『玉勝間』寛政5年(1793)には「いしぶしといふ魚は、今の世にごりといふものなるべし。このごり、鴨川、桂川などに多く有て、つねに石の下にかくれてゐる物にて、石の下を尋ねてとるなり」と記されている。たしかに、「ゴリ」はよどんだような川底の石の下にへばりついてあまり動かない。中学生のころ、鴨川の荒神橋付近で、布網や手でよくすくいとったものであった。  上方雑俳によると、「追かけ歩行 名の川にごす鮴すくひ」文政5年(1823)とあるし、「ぬるぬるします すべりこけてる鮴すくひ」明治34年(1901)などとでる。この「ゴリ」をゴリオシといって川底にむしろを置いて追いこんで、むしろごと持ち上げてとる方法もあったという。