京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ゴキント(ごきんと)

 「ゴキント」は御金当の字があてられ、律儀で、ていねいといった意味をもつ。「ゴ」は接頭語であることはたしかだが、「キントウ」とは、借りた金品をすぐに返すことからきているという。そこから、几帳面(きちょうめん)になどといった意がでてくる。そして、例えば「ウチ(自分の家)まで、ゴキントハンにオーキに」といった返礼の挨拶(あいさつ)語ともなる。全国的な方言分布はそれほど広くなくて、大阪、滋賀、和歌山などでみられる。  雑俳資料でみてみると、「御きんとふなどと内儀は斗(はか)つて見」明和中期(1767ごろ)とあるのが、嘉永4年(1851)ごろになると、「ゑゑてせいなをを否(いや)醤油御きんとに」となってでてくる。このあたりに、語源的な金品をすぐに返すことから律儀でていねいな意へと意味変化がみられると思う。京都市内では「ゴキントハンニ」、府下の福知山市、京田辺市、精華町などでは、「ゴキントニ」といった形で現用されている。