京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

エグイ(えぐい)

 「エグイ」は、京のことばでは(A)えがらいの意と(B)辛辣(しんらつ)なとかひどいの意で用いられている。例えば、たけのこやずいきのあくが抜けなくてえがらいときに「こんなエグイモン、食べられヘン」というし、「あの人、顔に似合わずエグイこといわハルエ」などと使用する。その語源は、エグルような味からきているといわれる。「エグイ」の分布は全国的にみられるが、(B)の意味では畿内周辺に限られる。  雑俳資料では、(A)の意で「ゑぐいも売りがきつい勝ち」宝暦9年(1760)、「ゑぐひが味じや 元より接(つい)だ木ではない」天保4年(1833)、(B)の意で「ゑぐうても一かは内に笑有り」明和4年(1767)、「顔付のゑぐい馬士(まご)めが色事仕」文化13年(1816)とか「奉公してゑぐい仕切(しきり)もたしかさに」明治26年(1893)などとある。里芋やずいきを「エグイモ」というように、それがいつしか意地悪の意味ともなった