「ドヤス」とは、なぐりつけるとの意となる。たんに、なぐるとかたたくとは少し違う。 「コイツ、ドヤシタロカー」といったばとう語の中には、なぐり倒すという意味がこめられている。語源は、どなりつける(ど喧し)から転意したものであろうか。文献では、天保12年(1841)の『新撰大坂詞大全』に「どやすとは、人をたたくこと」とあり、同じころに書かれた『丹波通辞』にも「人をたたくを、とやす」とある。京都市では山科や醍醐で、府下は北は舞鶴市、南は南山城で使用されている。 雑俳資料では、「みやげじやと、せなかをどやすなんばきび」宝永4年(1707)、「横鉢巻 鎌でどやして大根くふ」天保7年(1836)。「まさるなり どやされて来て寝てる方が」明治25年(1893)とでてくる。先に述べたように、「ドヤス」は同じたたくの意でも、「ドツク」(ど突く)や「シバク」(撓く)や「ハル」(張る)より、その程度が強いといえよう。