京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

デボチン(でぼちん)

 「デボチン」とは、京のことばでいうおでこ、額のことである。これには、出坊ちんの字があてられ、もとは出額のことであったらしい。「チン」は単なる接尾語である。京都では、「コケテ、デボチンに傷がついたワー」などという。江戸中期ごろの『俚言集覧』に「でぼちん、大坂詞で出たひたひのことなり」とあり、また、文政2年(1819)に書かれた『浪花聞書』にも、「でぼちん、出たひたひのこと也」とある。そが、高くでた額から、普通の額をさすのへと微妙に意味変化していく。関西以西の各地でいう「デボチン」は、突き出ているとか、額が大きいといった意味が多い。  雑俳資料では、「おゆるしじや でぼちん澤山(たくさん)に上り」天保15年(1844)とか「心配 臼取さんが出額(でぼちん)で」明治16年(1883)とあるのである。このことからいえば、「デボチン」という出額が、単なる額を意味するようになったのは、最近になってのことかもしれない。