京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ダンナイ (だんない)

 「ダンナイ」という形容詞は、大事ないからきているものだと思う。慶安3年(1650)に書かれた京都語の古典といわれる『かたこと』に、はっきりと「大事なひを、だんない、だひもない」と記されている。現代的にいえば、さしつかえないということになる。「カマヘン、そんな事ダンナイシ」「気(きい)使うてモロテ、悪かったナ、ダンナイのに」などと使用する。語源はといえば、「ダイジナイ」の「ジ」が脱落し、そして「イ」が撥(はつ)音化して「ン」となったのであろう。
 雑俳でそのあたりの経過を例にみると、「だいじないかへ 障子閉(さ)す舟」文化初年(1804ごろ)と時代劇にもみられる場面が、安政4年(1857)の句になると、「番花も出花 供してる方もだんないなあ」とか、安政5年(1858)の「気が悪ひ だんないじやない知らんでは」などとなる。語の変遷とはこんなものだし、現在では近畿、四国、中国地方でもみられている。