京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

バッテラ(ばってら)

 ここでいう「バッテラ」は、鯖(サバ)の押しずしのことである。ところが、この「バッテラ」は、明治も後期にでてきた語であって、現在に至っている。というのは、語源がポルトガル語の小舟の意である「bateira」にあって、その形態が似ていることからきている。それが、明治の末期から大正期にかけて、小舟の意は英語の「boat」と変わって一般化していく。  雑俳でみると、鯖ずしの意である「バッテラ」はみあたらないが、「一二あらそひ バッテラ漕(こ)いで馬鹿連が」明治16年(1883)、「友が寄(よ)り バッテラ遊びする休暇」明治43年(1910)とあるのが、「いつまでも 帰らぬ二人貸しボート」昭和4年(1929)となって、その語形が変転していくことがかわかる。明治27年(1894)ごろ、大阪のすし屋が初めてこころみた鯖の押しずし「バッテラ」が、小舟の意から転移して残り、近畿圏で使われるようになっているのは興味深い。