米の粉と上白糖を練って蒸しあげた生地をういろう(ういろ)といいます。細工するのに適当な腰と粘りがありながら、喰い口がさっくりとしている点から、暑い時期にも用いられる生地です。色付けもしやすいので薄く伸展した生地を何層にもかさねて色目を楽しむこともできます。
朝顔は餡を紅色に染め、白いういろうで折ってつくります。
錦玉をごく薄い緑色に染め、そこへ濃い目の緑色の葛羊羹を合わせます。
錦玉を半冷ましにしたところに葛羊羹を流し込むと、重みで葛羊羹が沈み、グラデーションがかかったように2層に分かれます。わずかに緑がかった透明な錦玉の上層が、下層の半透明の葛羊羹の緑色を映すさまは、苔の緑色を映す山の岩清水を思わせます。錦玉と葛羊羹とでそれぞれ柔らかさも違い、ひとつの竿物のなかで微妙な食感の違いが楽しめるお菓子です。
美しい層になるよう、錦玉の冷やし加減、葛羊羹のつめ加減など、少しだけ気を使う仕事ですが、なんとも涼しそうな流し物です。
お馴染みの葛饅頭に赤く染めた白餡を一点付け加えただけのお菓子です。暗闇に浮かび上がる送り火を思っていただけたら。
葛のお菓子、いわゆる葛饅頭は今月で終わりですが、来月はまた葛焼が出ます。
今はもう6月ころから白餡を使って様々な意匠で色付けしたものや、餡の入らない葛焼も出ますが、ふた昔くらい前までは葛焼といえば漉し餡の入ったものを指し、晩夏から初秋のころにつくったもので、葛焼をつくることで私なぞは秋の訪れを感じたものです。私方の葛焼は銘を「旅衣」と申します。他にも百合根を散らした「初雁」も茶方のお菓子で出ます。