有明の 月のしとねを 人問わば
仄かに光る 菜の花の海
京都の上菓子屋では、1月に皇居で行われる歌会始の御題に因んだ「御題菓」を作るのが習わしとなっており、年明け早々のハードルです。御題や干支と決まったテーマで作られるお菓子には、各お店の個性、特色が出ますので、毎年ゝゝ緊張します。今年の御題は「月」。歌にも詠まれている菜の花の黄色で「菜の海月」と名付けました。
きんとんは竹や金属の篩で軟らかく戻した餡をそぼろ状に押し出し、丹波大納言の粒餡のまわりに付けて行きます。そぼろ餡は岡山地方特産の白小豆を使った白餡を食用色素で着色したものを使います。色の附けかた、そぼろの固さ、太さ、長さなどで四季の移ろいを表現するため、各店の個性が一番出るお菓子だと思います。餡そのものの味がはっきり出るので、京都のように最高の品質の原料を使いこなせる土地柄ならではのお菓子。故に京菓子の三名物の筆頭に挙げられています。
12年に1回と言えばそれまでですが、毎年頭を悩ませます。
今年は干支尻で猪。お近くの護王神社の御祭神・和気清麿とお使いの神猪に因んで和気と名附け、若緑と焼印で猪の疾走する姿を表現してみました。
”和気”の生地、薯蕷は丹波特産のつくね芋をすり下し、上白糖と米の粉を練り合わせて、餡を包み、蒸し上げて、底の部分を鉄板で焼きます。これが京菓子三名物の二番です。
元は宮中で使われていた餅の餉(かれい)ですが、明治以降、お菓子として工夫され一般に売り出したものを裏千家の玄々斎が初釜のお菓子として使用するようになってから広く知られるようになりました。
宮中のものは、直径13センチ位の円形に薄く伸ばした餅に干した鮎と味噌をのせてあります。お菓子の方では鮎をごぼうに、味噌を味噌餡に換えて作っています。