京都民報
なるほど京都

京の菓子暦

茶の湯と京文化に磨かれ、育まれた京の和菓子。四季折々の京の和菓子を紹介します。

甘楽花子 坤庵

5月

木の芽上用(きのめじょうよう)【薯蕷、こし餡】

菜種巻  山椒の爽やかな香気は初夏のころ目に映る新緑の緑とともに心身をリフレッシュしてくれます。
  山椒は、花、実、若葉とさまざまな部位を使用しますが、それぞれに使われる季節が決まっています。山椒の香りは季節ごとに少しずつ違い、その香りの変化で季節の移り変わりを感じるものです。いわゆる「木の芽」は晩春から初夏にかけて。「木の芽」は、日本人にとって新緑の季節の香りの代名詞。「木の芽」という一般名詞が特に山椒の若葉を指すほど親しまれてきました。
 つややかな上用の白に、くっきりと映える木の芽。葉先の数葉を頭頂にのせただけの上用ですが、見事に季節を表しています。山芋の風味にさらっとした漉し餡、そこにピリッとした木の芽の風味が加わり、ひと口で新緑の季節の到来を感じさせるお菓子です。


藤波(ふじなみ)【ういろう、白餡】

藤波かくてこそ 見まくほしけれ よろづ代を
 かけてにほへる 藤波の花
延喜御歌
滝のごと 房なす花の紫に
    命盈(み)ちあり よき事聞く日
草志
 五月の花というと、花菖蒲、橘、そして藤でしょうか。万葉集や枕草子など、古来より歌に読み込まれ、愛された藤ですが、藤原氏を象徴する花とされたことから、ことに平安時代に愛好されたそうです。京都には平等院のほか、城南宮や勧修寺、白藤の詩仙堂など、藤の見所も多いのです。
 藤の花房をういろうのひねりで表現してみました。丹波大納言の蜜漬けをのせて、アクセントにしています。暖かくなってまいりますと、やはりういろうのようなさっくりと軽い口当たりのものが合います。