京の地酒

酒造りの道具

きつね

 酒作りの道具には、動物の名前のついたものがいくつかあります。これは「きつね」と呼ばれる特殊な桶です。酒のもろみを汲み出し袋に入れる時に使いました。袋の口に注ぐ時に扱いやすいよう、一部がとがった形をしてます。この形がキツネの顔に似ていることから、そう呼ばれました。
 桶の内側の上部に、握りやすいよう突起部があります。また、底には持ちやすいよう、削って凹みをつけてありました。用材は杉、竹。昭和20年代頃まで使われていました。
 酒しぼり工程で、きつねを持つ人を「ちょうし持ち」といいます。待桶の醪を汲勺で桶の縁に置いたきつねに汲みいれ、袋を積む人が酒袋の口を開けて待っていると、ちょうし持ちは底の部分の切れ込みと、口の部分を手で持ち、尖っている方を酒袋の口に当て、醪を入れました。きつね一杯がちょうど袋一杯の分量でした。

使用工程:酒しぼり工程