京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ヨンベ (よんべ)

 「ナリ」につづいて、「ヨンベ」について述べてみたいと思う。「ヨンベ」とは、昨夜のことである。ともに共通しているところは、古代からの語ということである。平安時代に紀貫之が書いた『土佐日記』には、「よんべの泊(とまり)より、こと泊を追ひてゆく」とあるが、70歳近くであった著者が土佐(高知県)の国司(知事)の任を終え、京都へ船旅をしてもどる心境を物語っている。当時では帰行するのも大変だったのであろう。ただ、この「ヨンベ」という京ことばは年配層で使われている。「ヨンベ、お宅で何かありましタンカ」と異変があるとたずねたりする。
 雑俳でみると、「髪にかほによんべのみゆる台所」寛政5年(1793)とか「鉢巻して 昨夜(よんべ)の小判みる幇間(たいこ)」文政9年(1826)などとでてくる。京都府を例にしても、京都市はもちろん北部の網野町、舞鶴市から、南部は城陽市、京田辺市で現用されている。