京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ヨーケ (よーけ)

 「ヨーケ」も、多くとかありあまるといった意味をもち、「ギョーサン」や「タント」との類義語である。漢字では、余慶と余斗があてられているが、もともとは、祖先の積んだ善事のおかげでそれを子供が受けるという「余慶」の意であった。
 それが余裕の意に転じ、江戸の中期になると十分にたくさんといった意となる。語形も「ヨケイ」が「ヨケ」、さらに「ヨーケ」と音転していく。
 雑俳でみると、「身は五尺九尺の庵もまた余慶」元禄十六年(1705)が、「人よりも汗を余斗(よけい)かき」天保十年(1839)となって、その意味が転じていく経過がよくわかる。現代では、「御飯がヨーケ残ってるワ」とか「あんた、ヨーケ取りすぎや」などと使用する。
 類義の三語ではあるが、「ギョーサン」は多数の意、「タント」は多量の意、「ヨーケ」は過多の意といったニュアンスをもって京都の人は自然と使い分けている。