京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ツキダシ(つきだし)

 夏も近づき、このあたりで「ツキダシ」に登場してもらおう。ここでいう「ツキダシ」とは、屋台や料理店などで本料理の前に出す小鉢物のことである。夏の季節には、冷やっことか枝豆などがよく似合う。語源は「ツキ」は初めての意があって、思っていることを無遠慮にすぐ言うという「ツキダシ」が方言としてみられる。天保年間(1830~1843)の文献には「樋屋にあらずして底入れたとはいかに、箱屋の細工にはあらねど突出しの肴(さかな)といふがごとし」とある。  しかし、雑俳資料でみると、小鉢物の意の「ツキダシ」は明治以降にならないとでてこない。「早い早い、突出しが客落かす」明治15年(1882)、「売れ残り 突出しにする時雨(しぐれ)だき」明治36年(1903)となる。「ツキダシ」のことを俗に「アテ」ともいうが、これも上方語的なことばといえる。関東流にいえば「オトウシ」(お通し)になるのであろうか。「ツキ」の問題は深い。