京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

スグキ (すぐき)

 「オマン」がでたところで、公家に関係する「スグキ」についても述べたいと思う。「スグキ」はもともと屋敷菜といわれ、社家がその屋敷内で栽培したものであった。江戸期における社家の日記や文書によると、「スグキ」の呼び名が「クキナ」(茎菜)、「ツケナ」(漬菜)、「クキヅケ」(茎漬)、「ミズクキ」(水茎)といったように変遷したことが新聞で報じられた。それも、漬け上がりの時期が4月上旬から2月下旬へと早まったらしい。当時の「スグキ」は夏の珍味で、葉や茎を主に食べていたようだ。
 雑俳でみるとその経過がよくわかる。「身構えして 茎菜邪魔する御寮人」文化元年(1804)、「我(が)折らした 茎漬に知る嫁の力(りき)」文政2年(1819)とあるのが「つらつらと 水茎美しう流し」天保15年(1844)、「出しかけて酢茎(すぐき)を配る先算(かぞ)ふ」明治36年(1903)となって、今のように、根を主体に食べる様子がみられる。