京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

シルイ(しるい)

 「シルイ」というのは、雨の降った後や雪どけのした道がぬかることをいう。語源は、名詞の汁(しる)が活用してものといわれ、水分が多くてやわらかいとの意からでた。安永4年(1775)に書かれた『物類称呼』に「道路のふかりを、関西にてしるいと云」とあり、また、安永5年(1776)に記された「世間仲人気質」に「昔の京奈良の辺はいふに及ばず、大和河内の辺にては、雨にても降しあげくや何ぞで地のしめる所をじるいといふ」とある。そして、文政4年(1821)の『浪花聞書』にも「しるい、江戸でいふぬかるみなり」とでている。この語の分布は、近畿、四国、九州の大分県あたりまでみられる。  上方雑俳でみると、「天気がよふて 常より井戸の端(はた)がじるい」弘化2年(1745)、「ふくれてる じるい所で履(は)くさかひ」文政5年(1858)などとある。ただ、京都語的にいえば、「ジルイ」より「シルイ」というほうが強い。