京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

センド (せんど)

 ここでいう「センド」とは千度であっていく度もの意であり、先度という字があてられる先ごろの意味ではない。アクセントも全高と中高(なかだか)との違いがみられる。京都のことばでは「センド言ったのに、何してンニャー」とか「こうなったのも、センド言うてたヤロ」といったように使用する。どうも元禄期ごろから両方の意味で使われたとみられるが、安永4年(1775)の『物類称呼』に「多いと云事を、京にてはせんどと云」とあることから、いく度もの意が強くなってきたらしい。
 雑俳では、「せんど来て帯もとかぬに郭公(ほととぎす)」元禄15年(1702)とか「はてのない事 先度から鴨居一つに研(と)ぐかんな」元禄16年(1703)とあるのが、明治43年(1910)になると「栄ようを叱り せん度捜してつい隣」となる。現代の京ことばでは、「センド」は千度のほうが先度より使用度が強いといえる。