京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

サラ(さら)

 「サラ」とは、新品とか新しい物といった名詞である。「サラの服着て、どこ行くニャナ」とか「サラの靴はいたら、足が痛うなったワ」などと使用する。語源は、あら(新)に接頭語の「サ」がついた「さあら」が縮まったものといわれる。江戸中期に書かれた浮世草子の『元禄太平記』には、「更に訓(よ)むは、新(あら)に通ず。今もあらたにすることを、さらと言へり」とある。建物を解体した後の更地(さらち)もこの意味をもつ。
 雑俳では、「又しても 隣りへはしる新(さら)世帯」文政七年(1824)、「そりかへり こんなさらは喰はりやせん」天保十五年(1844)、「にこにこと 新(さ)らの粒(つ)ぶ捻(ね)じ履くでつち」明治二十五年(1892)などとでてくる。どちらにしても、江戸末期から庶民層にひろまった語と考えられる。この語の意味を強めて、「マッサラ」ともいう。