京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

サイナラ(さいなら)

 「サイナラ」は別れるときの挨拶(あいさつ)語で、「サヨナラ」が訛(なま)ったものといわれる。「サイナラ、また明日(あした)」とか「サイナラ、この次また会おナ」などとよく使われる。畿内だけでなく全国的に使用されている語で、京都府下でも北は舞鶴市から南は木津町までみられる。ただ、関連する同じ意の挨拶語に「サラバ」があるが、この語の歴史は古い。『伊勢物語』にも、「さらばよと別れし時に」などとある。その「サラバ」が左京区八瀬の老年層の会話で、別れ帰るときに現用されているのには驚きである。  雑俳でみると、「へいさよなら 後へ残つて乳母の気が」明治26年(1893)とあるのが、その少し後では「さいならまあ 四方(よも)へ別れる船上り」明治33年(1900)となる。明治36年(1903)の「大阪のをさな言葉」にも、「さいなら、さやうなら」とある。このことからみると、「サイナラ」明治以降になってでてきた語かもしれない。