京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

オトガイ(おとがい)

 「オトガイ」は顎(あご)のことであるが、今の市内ではほとんど適用しない。しかし、京都市周辺部では確実に残っていることばである。北部の八瀬、雲ヶ畑、高雄、そして亀岡市あたりまで、また南部は精華町にもみられる。「オトガイ、タタク」とか「オトガイ、ハク」とは口ごたえすることをいう。語源は諸説あるが、定かではない。ただ、日本最古の漢和辞書『新撰字鏡』昌泰年間(900年ごろ)に「頤、於止加比也」とあって歴史は古く、『浪華聞書』文政2年(1805)には、「をとがい、江戸であごといふ」とある。  雑俳では、「可愛らしやの 二つの頤(おとがひ)をねぶり」とか「ろくに居て 手足を頤で遣(つか)ひ」天保15年(1844)、「浜風に をとがひはづす笠の紐(ひも)」明治33年(1900)などとある。理屈はこねても実行が伴わないことが多い現状、生活で「オトガイ、タタク」ことだけは避けたい。