京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ネブル(ねぶる)

 「ネブル」とはなめるの意である。安永4年(1775)の『物類称呼』には「なめるとは関東にて云、畿内にてはねぶると云」とあり、文政4年(1821)の『浪花聞書』にも「ねぶる、なめる也」とある。語源は諸説あるが、「ネリフル」(練触)からでたものであろうか。この語の方言分布は、畿内から西日本かけてへと広い。例えば、「どんな飴(あめ)、ネブッテルの」とか「指ネブル癖はアカンエ」とかいったように使用する。  雑俳資料では、「密夫が皿まで舐(ねぶ)る朝の月」寛政3年(1791)、「戸をあけて ぴしり〆(しめ)て指ねぶる」天保15年(1844)とか「べたりと 重箱の餡(あん)舐てる」明治13年(1880)、「ねぶてる うた口しめす笛始め」明治36年(1903)などとでてくる。私らの世代では、「ネブル」といえば、一文菓子屋で売っていた白い線のニッキがついたどんぐり飴を思い出すことであろう。