京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ナオス (なおす)

 「ナオス」(直す)の一般的な意味は、文字通り歪(ひず)んだものを正(ただ)すことである。それが転意して、京ことばなどでは、しまうとかかたづけるという意味をもつ。「このお茶わんは大事なモンヤシ、箱に入れてナオシトイテ」といったように使用する。この意味で使用されるのは近世になってからといわれ、文政9年(1826)に書かれた洒落(しゃれ)本には「清さんから請取った50両はなおしておいて」とでてくるし、「東京京阪言語違」明治19年(1886)では「なおしとき(京阪)、しまっておけ(東京)」と記されている。
 雑俳資料でも、嘉永4年(1857)の「浮世はさくさく 溜ったほこり直しとく」や明治31年(1898)の「ここで遣(や)ろ 衝立(ついたて)直す木綿買」といった句になると、はっきりとしまうとか、かたづけるの意で使用されてくる。現代の京ことばには、近世の後半になって現れてくるものが多い。