京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

コソバイ(こそばい)

 「コソバイ」は、くすぐったいの意である。形容詞の「コソバユイ」が短音化して「コソバイ」となった。慶長8年(1603)の『日葡辞書』には「コソバイ、またはコソバイイ」とある。その後の『浪花聞書』文政4年(1821)では「こそはい、くすぐったいなり」とあるし、嘉永3年(1850)の『皇都午睡』では「こそばい(上方)を、こそぐったい(江戸)」とでている。「コソバイ」の連用形「コソバク」がウ音便化した「コソボウ」は、現在でもよく使用される。  雑俳資料でみてみよう。「とは思へど 尻のこそばい加田の客」文政2年(1819)、「深切(しんせつ)過(ぎ) 世話こそばがる小金子(こがね)持ち」安政3年(1856)、「はへたはえた 乳豆こそばふ歯が障(さわ)る」明治43年(1910)となってでてくる。この語の方言分布も、近畿、四国から九州へと西日本型に広い。変形は、「クスバイ」、「クスワイ」などとある